鍵を失くしたのに気づいたのは、四時限目の授業をふけようとした時だった。
学校の駐輪場、自分の自転車を前にして、陸は青ざめた。乱暴に鞄の中身をあけ、中身と言っても空の弁当箱とsmartが入っているだけだったが、詰襟の制服やズボンやのポケットの中を探り、さらに、両手でぱたぱたと叩いた。
どこにもない。
自転車の鍵はどうってことなかった。家に戻ればスペアキーがある。自宅の鍵も問題ない。二階の自分の部屋の窓は施錠しないから、庭の木を登って屋根に渡れば、部屋に入ることができる。
だが、バイクの鍵に、スペアはない。
子供の頃に乗っていたオフロードバイク。とっくに手放したものだったし、たとえあったとしても、高校生の陸が乗るには小さすぎる。だから、その鍵は必要のないものではあった。あったが、陸にとっては大切なものだった。
鍵を陸が持っていると知ったのなら、母の倫子は怒るだろう。怒るのならまだしも、泣くかもしれない。母に泣かれるのは嫌だった。何も悪い事はしていないと思っていても、罪悪感が胸の底から湧いてくるからだ。罪悪感は、腐った卵のような、汚泥のような匂いと共に湧いてきて、躰の中を濁らす。一度生じた濁りは簡単には消えない。陸にできるのは、躰の底の、底の底に押し込めるだけだった。だが、それも、そろそろ限界だ。
本当に、自分は何も悪い事はしてないのか。
自分の望んでいる事を言えないでいる、それは正しいのか。
高校を卒業して就職。狭まっていくだけの人生を、楽しいと思えるのか。
チャイムが鳴る。
ぐずぐずしてはいられない。
巡回の教師に出くわしそうだ。
陸は、加速していく思いを断ち切った。
鞄を肩にかけ、駐輪場の柵をひらりと越えた。住宅街の裏道を駆け抜けていく。バス通りに出ると、素早く左右を確認した。歩道橋は上らない。これ以上、回り道も安全な道も欲しくなかった。車道を走って横断し、そのまま走り続けた。クラクションも罵声も、何もかもが後ろに飛び退っていく。
はっはっ、という荒い息を吐く。汗が目に流れ落ちる。視界がぶれる。
ぶれていく視界の向こうに、何かが広がればいい。その広がりには答があるのだと、陸は思いたかった。
文章を書くのが、本当に下手になってしまって、少し練習をしていかなければ、と思っていました。
自分には珍しく速く書けたんだけれど、普通には遅かったみたい。
事故作品になってしまったのはいいのだけれど、かなり下の方で。。。(^^ゞ
感想を書くのも難しいなあ、と思いつつ、書きました。