君のニックネームが「うどん屋」であるのは、実家が定食屋のせいだと君は思い込んでいる。君だけじゃない。君のクラスメイトも部活の連中も、皆、そう思い込んでいる。
確かに君の親父さんの作るカツ丼や生姜焼き定食は旨くて安いし、冬のメニューに追加される鍋焼きうどんには心も躯もあったまる。けれども、夏に出される冷やしたぬきうどんに勝るものはない。竹ザルに載った麺の白く冷たい輝き。小皿に添えられた天かすと大根おろし。別な小皿には細かく刻んだ小ネギと輪切りのすだち。つゆは少々塩辛いが、食べていくうちにちょうどよく薄まっていくから平気だ。薬味を入れたつゆにすだちの汁を絞り、麺をつける。音を立てて食べれば、麺が冷んやりと喉を過ぎ、さっぱりとした香りが口の中に残る。暑いさなかには日に一度は食べたくなる。店の看板メニューであるのは間違いなく、暖簾は定食屋よりうどん屋の方がふさわしい。
しかしながら、君のニックネームの由来はうどんではなく愚鈍だ。
君が学校に来ているのは部活のサッカーをするため。授業中は眠っているか、早弁をしているか、サッカー関連の雑誌や本を読んでいる。たまに熱心にシャーペンを動かしているな、と思ったら、攻撃のパターンをノートに書いている。
君が一番生き生きとするのは、ユニフォームやジャージに着替えてグラウンドに立った時だ。サッカーの練習は準備運動であっても、けして手を抜かない。監督に怒鳴られようと、泥の中を転がろうと、ベンチ入りできないのがわかっていても、全身全霊でボールを蹴る。
練習が終わり用具を片付けた後、選手達はグラウンド横の水飲み場で顔や手を洗う。マネージャーはせっけんを並べ、タオルを手渡す。
一枚だけ、手洗いをした特別なタオルが渡っていることを、君は知らずに受け取り、濡れた頭や顔をごしごしと拭く。手渡した者の顔も見ずに「サンクス!」と言い、部室に向う。
だから、君は、愚鈍、なんだ。
いい加減に気付けよ。
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−了−
「せっけん、サッカー、うどん屋」
鍛練場に投稿してから間違いに気づいた。「柚子」は冬のものだよ。慌てて調べて「すだち」に落ち着いたけれど、うーん、こういう冷やしたぬきうどんって食べたことないから、これでいいのかどうかわからんっ!
山菜なめこ蕎麦が好きで、それ以外、あまり食べないんだもの、冬も夏も。。。。と言い訳〜。
さらに変更〜(・_・;)
「でも」の使い方が変だった。あーあ。。。。(嘆息