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Author:芳野 朔
芳野です。自作小説と手芸、日々の雑感をたま〜に綴っていきます。尚、ここに投稿された小説の著作権は全て私、芳野にあり、他の文章はその筆者に著作権があります。無断転載・盗用等を禁止します。

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『遠吠え』

「蟷螂」
「は?」
「いや、だから、いいぼむしりってのはカマキリのことで」
 ス、
「カマキリ? カマキリって、あの昆虫の? 手がハサミになっているヤツ?」
「そう! そうなんだよ、カマキリは平安時代には、いいぼむしり、鎌倉時代には、いもじりって言っていたんだ。あ、それから手じゃなくて前肢で、ハサミじゃなくて鎌だよ、原田さん」
 ス、ス、スス、
「あ、そう。で、そのカマキリがどうしたの?」
「ス」
「酢!?」
「い、いや、そうじゃなくて、つまり、その、カマキリに違う名前があるように、物事には違う意味があって」
 ス、ス、スススス、
「紺野」
「はい?」
「何が言いたいの? あたし、これから部活なんだけど。生物の勉強でもしたいワケ?」
「あー、だからですね、生物じゃなくて、英語のアポストロフィー・エスなんだけど」
 オ、オレ、オレの、
「だから何?」
「オ、オレ、オレオレッ、のアポストロ」
「あー! ウザいっ! 勉強の話をしたいんだったらオタク仲間の相沢としてくんない? あたし、部活だから。邪魔っ、そこどいてよ!」
「いてっ」

 原田亜佐美はオレの足を踏みつけると、鞄とスポーツバッグを持って教室を出ていった。
 残されたオレの肩を相沢がぽんぽんと叩く。
「残念だったね、紺野クン。これで五回目だけど、今回も玉砕でしたね。原田さん、中間テストで現国、赤点だったって噂だし。読解力ないんだから、仕方ないですよ。次の手を考えましょう」
 オレは相沢を睨みつけた。文学的表現で知的に迫れ、と言ったのは、他ならぬこいつだ。オレは相沢の手を振り切ると駆け出した。階段を上り、屋上に出る。オレンジ色の夕陽が、今、まさに向こうの山に沈もうとしていた。

 好きだーっ! オレのものになってくれーっ!!

 オレは夕陽に向かって叫んだ。心の中で。  
 カギカッコの台詞を、いつになったら言えるのだろうか……。

   ―了―


 三語即興文 「カギカッコ、アポストロフィー・エス、蟷螂」







   774文字っ!

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Comment

ううむ。そこまでは考えてなかった。<777

ですねー。
紺野クンは永遠に玉砕し続けるように思います。
で、迷アドバイザーの相沢クンが、ちゃっかりちゃっかりしちゃうのでしょうねー。
青春だー!!

惜しい、あと三文字。

ス。スススス。で、ははあ、告白か、と思ったのです。
こいつはあれかな、蟷螂の斧、ってやつでしょうか。
恋愛は、たしかにほれた側が弱者ですよねえ……。
そんな弱者なのに、退くことを知らず、進むことだけを考えて、強敵に向かっていく。
このときばかりは、みんな大陸一の勇士ですね(笑)
オレ=蟷螂が、必死になって前肢の鎌を振りかざして強がっているのが見えて、クスリ。
それが前半だったのだけど、アポストロフィーで、これが誤読だと気づいて顔真っ赤。
だけど「オレのアポストロ」は笑いました。
でまあ、最後まで読んだら、やっぱりこれは蟷螂の斧だなあ、と思うのです。
きっとまたオレは懲りずに強敵に向かっていくのだろうし、
そのとき前肢の鎌(斧)は、相沢クンによってより大きなものになっているのでしょう。
だけどその鎌の重さにふらついて、オレはやっぱり負けてしまうのだろうなあ。

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