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Author:芳野 朔
芳野です。自作小説と手芸、日々の雑感をたま〜に綴っていきます。尚、ここに投稿された小説の著作権は全て私、芳野にあり、他の文章はその筆者に著作権があります。無断転載・盗用等を禁止します。

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『声』

 華やかな時が巡ってきた。街に雪が降り積もり、中心部にある公園では、樹々がライトアップされ電飾が輝く。日中とは違う明るさの下、人々が歩いていく。恋人達は二人きりで、友人や家族のいる人達は、和やかで暖かな一夜を過ごすのだろう。
 私は朝から掃除をし、料理を作り、ワインを冷やした。ラム肉はたれに浸けられ、サラダは冷蔵庫の中に入っている。ケーキを箱から取り出し、テーブルの中央に置いた。十五センチサイズのケーキは生クリームの上に苺や、緑の柊が飾られ、チョコレートのプレートにはMerry Christmasと綴られていた。それから、二人分のワイングラス、皿、フォークやナイフを並べた。窓辺には、写真立てと鮮やかなポインセチアの鉢が置かれている。用意が整うと、三年前と同じドレスを着た。カーテンを閉め、携帯電話を開いた。部屋の灯りを消したので、ディスプレイの画面が明るくなり、すぐに暗くなった。親指で操作をすると再び明るくなった。私は携帯電話を耳に当てた。
「美咲? ごめん、仕事が終わらないんだ。まだ帰れそうにない」
 圭一の声が聞こえてきた。低く温かで、私の大好きな声。少し掠れているのは、風邪をひいているからだ。
「無理しないでね。大丈夫?」
 ゴホゴホと咳をする音に重ねるように言う。
「悪い悪い。九時までには帰れると思うから。プレゼント、ちゃんと用意してあるから。じゃ」
 私は何かを言おうとして口を開いたが、電話は切られてしまった。
 何も聞こえてこない携帯電話を閉じ、テーブルの上に置いた。テーブルの中央にはクリスマスケーキと、ひしゃげた小さな箱。箱の中には三年前のクリスマスプレゼント、シルバーのリングが入っていた。
「ばか」
 小さく呟いた。
 プレゼントだけあっても、何もならないじゃない。帰ってくるのを急がなくなったって良かったのに。信号を一つ見送ってくれれば……。
 顔を両手で覆った。掌で涙を押さえようとしたが、無理だった。忍びやかに過ぎていく夜に、私は心を閉じた。


  ―了―

〜「鮮やか、和やか、忍びやか」「電話で話をさせる」

えーと、美咲と圭一が電話で話しているのではなく、携帯電話の留守録に入っている圭一の声を聞いている、という設定です。
悲しい話になってしまった。。。。

「忍びやかに」が難しかった。イメージは浮かび、この話になったんだけど、ラストの一行がどうにも決まらない。迷った末にこの文になったんだけど、自分としては、納得できてない。

そして、なんと!
831文字!!

奇蹟っておきるものなのだなあ。じーん。。。。。。

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