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Author:芳野 朔
芳野です。自作小説と手芸、日々の雑感をたま〜に綴っていきます。尚、ここに投稿された小説の著作権は全て私、芳野にあり、他の文章はその筆者に著作権があります。無断転載・盗用等を禁止します。

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『卒業』

 入院患者にも古参と新米がいる。当然ながら年齢は無関係だ。
 二十代前半のミサトさんは五度目の入院。仕事帰りの彼氏が毎日見舞いに来てくれる。
 今日、入院したキヨさんは七十歳になったばかり。ご主人と娘さんが心配そうに付き添ってきていた。
 いつも明るい篠崎さんは、多分、この病棟で一番歴史が長く、八度目の入院。今回が最後で、明日には退院する。そして卒業だ。春になったら桜を見に東北を回るの、と嬉しそうに言う。
 三十二歳の涼子さんは一歳の息子さんをお姑さんに預けて三度目の入院。来月は手術だから一ヶ月以上入院しなければならない。今でも顔を忘れられているのに、そんなに長く離れていたら完全に忘れられちゃう、と笑う。
 そして、私は五度目の入院で古参のうちに入る。看護師さんの名前も特徴も覚え、病院食も食べ飽き、病気や薬の知識だけが増えていく。
 病室の窓からは藻岩山(もいわやま)を見ることができる。標高五百三十一メートルの小高い山はスキー場もあり、観光道路も走っている。山麓からは山頂駅へとロープウェイがあり、夜になれば、ロープウェイの灯りがクリスマスツリーの電飾のようだった。
 二度、三度と入院する度に、山は紅葉し、四度目の入院の時は、すっぽりと雪に覆われた。点滴の薬液の落ちる速度とぼた雪の落ちる速度とを比べてみたり、朝目覚めた時に、晴れていて山を見ることができればラッキーで、曇天か雪空で山が霞んでいればアンラッキー。そんな他愛のないジンクスを作って遊んだ。ラッキーな日は注射針を射してくれるのが上手な看護師さんで、アンラッキーな日は下手な看護師さん。殆どの看護師さんは上手に針を射してくれるから、気休めにしかならないジンクスだ。
 五度目の入院はいつものように淡々と過ぎ、来月、もう一度入院して、終わり。その頃は雪も融け、新緑の藻岩山となっているだろうか。でも、もう二度と、このアングルで見たくはない。病気にも病室にもサヨナラして私も卒業しよう。


   −了−

〜「古参、新米、病気」 「山を出すこと」

久々の三語〜。山が難しかった〜。
ロープウェイ、最後に乗ったのはいつだったろう。多分、今じゃ、絶対に乗れない。←高所恐怖症だから(笑) 
飛行機には乗れるんだけどなあ。

ブログ拍手をくださって、ありがとうございます。
TさんのコメントもKさんのコメントも読ませていただいてます。Tさんのためにツブの写真も撮ってあるんだけど、なんとなくタイミングを逃してしまって、アップしてません(^^ゞ

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Comment

卒業写真のあの人は〜

皆さん、拍手をありがとう〜。
嬉しいです〜。

「卒業」という言葉から連想するのは、ユーミンの『卒業写真』ですねー。
尾崎豊はよく知らないです。『I LOVE YOU』を聴いたことがあるくらいかなあ。
ダスティン・ホフマンの『卒業』はまだ観てないのですが、The Sounds of Silence は好きですねー。

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