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Author:芳野 朔
芳野です。自作小説と手芸、日々の雑感をたま〜に綴っていきます。尚、ここに投稿された小説の著作権は全て私、芳野にあり、他の文章はその筆者に著作権があります。無断転載・盗用等を禁止します。

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ちまたで噂の

アウトラインプロセッサーを入れました。
ええ、ダウンロードはすぐ出来たのですけれどね、解凍するのに二日かかりまして、使えるようになるまで更に一日かかりました(ノートPCとあわせて、四回はダウンロードと削除を繰り返しましたとも!)。

えーと、使ってます、あうとら。
別なのもダウンロードしたのですが、機能的にはそんなに差がないみたい。あうとらはカラー表示なので、こちらの方が書いていて楽しいかなあ。

途中で書けなくなると、そのまま先に進めない状態が何ヶ月も続くので、これなら途中から書きだしたりできるんじゃないかという淡くも渇望に近い期待を持っていたりして。
投げっぱなしの作品をとにかく完成させよう、うん。

『天邪鬼』作品考

作品考などという大袈裟なものではないのだけれど、三文字タイトルにこだわったら、こうなりました。
3×2=6!

では、本題を〜。

三語作品を書く時は、書きたくて書く時もあるのだけれども(『出会い』がそう。課題が面白かったから書きたかった)、ちょっと無理して書く時もある。流れが止まっちゃったかな、と思った時や、どうしても、これを言いたい(作品ではなく、コメントを)と思った時。

『やめて』は流れが止まったと感じたから書いた。内容はないし、三語の消化もメタクソで、「ああっ、もう、本当に」と顔を覆いたくなるような作品ではあった……。
余談だけれど、課題に出した「夜のプールが舞台の話」というのは、自分が書いてみたい話ではある。でも、書こうとすると小川洋子さんの『バック・ストローク』が頭にちらついてしまう。他の人だったらどんな風に書くのかなあ、と次の作品が投稿されるのを、実はとても楽しみにしていた。

『天邪鬼』は、どうしても言いたいことがあって書いた。
作品投稿をせずにコメントだけを書くことはできないし、ショートメッセージ欄もラウンジも使いたくなかった。
吉野町に書く、という気持ちもなかった。
まあ、そういうわけで抗議コメントを書きたくて、『天邪鬼』を書いたのです。

何故、天邪鬼を登場人物にしたかというと、
第四回北日本児童文学賞の最優秀作品http://www.kitanippon.co.jp/pub/hensyu/juvenile/04_2006/interview.html
に、天邪鬼が登場人物となる話があって、数日前にそれを読んだ時、自分だったら天邪鬼をどんな形で作品に使うかなあ、とぼんやりと考えていたからでした。
三語のお題は「雷・救急車・マンション」「夏場の話で」だったのですが、
「雷雨の夜に、マンション内で事件が起きて救急車が呼ばれた」
「マンションの住人に急病人が出て、救急車が呼ばれた。雷雨の中、病院へ搬送され、急病人の命は助かった」
のような話にはしたくなかった。
そこで、天邪鬼を現代の話として登場させたのなら、と考えて、あの話に。
倉も長持ちも牛車も幟も微妙(^^ゞと思いつつ。うーん、素直にマンション、屋上にある何かの機械(実は自分でもよくわかってはいない。昔住んでいたアパートにはあった)、車で良かったかも。

私は激怒していて(かなり怒っていた)、スルーしようか、もっと穏やかに注意をしようか、だとか、いや、ここは、怒っていることを率直に伝えた方がいいんじゃないのか、だとか、考えていた。
その辺りが、
>もっともっともっと! 怒れ怒れ怒れ!
の文章に表れていると思う。

「天邪鬼」という漢字を読めるのかどうか、というのは、自分にとって既知の言葉であっても、若い子達にとっては死語で、「ひねくれ者」「つむじまがり」といった意味もわからないんじゃないのかなあ、と。
となれば、「マンション」は作者と読者にとって共通の言葉ではあるけれど、「倉」や「天邪鬼」は共通の言葉じゃなくて、児童向けに書く場合も、「天邪鬼」がどんなものであるのか作品の中で書いていかなきゃならないのかなあ、などとも。

天邪鬼と雷はネット検索をした(雷の語源は面白かった)。
『瓜子姫と天邪鬼』は地域によっていろいろな話の展開があって、そのどれを読んでも、あまり天邪鬼に好印象は持てなった。
天邪鬼が屋上で飛び跳ねてオワリではつまらなく、マンションであることの関連付けもあって、あのラストに。
「芳野の視点」と言われると困ってしまうのだが、妖かしと現代の結びつけ方が芳野風かなあ。誰もが思いつきそうな平凡なものではあるけれども。

意識したことは以上。
無意識のうちに書きたかったことはあるのかもしれない。
その時の精神状態が作品に反映されるのはよくあることなので。

今はもう怒ってはいない。

『天邪鬼』

 天邪鬼は不満だった。
 自分と遊んでくれる者はいない。戸を開けてくれと頼んでも、すんなりと戸を開ける者はいない。人々には自分の姿は見えないし、声も聴こえていないからだ。昔話の中に押し込められてしまっては、自分がいることをわからせるのは難しい。そもそも、「あまのじゃく」と正確に読める人間がこの世にいるのだろうか。
 素っ裸に近い格好で天邪鬼は高い倉の天辺に立った。
 見下ろせば、人々はせわしなく動き回り、牛のいない牛車が臭い煙を撒き散らしながら駆け抜ける。ほんの数百年前であれば、ここらは青々とした稲が茂り、そよ吹く風に揺れていたものだ。祠にはお供えものが置かれ、飯にこと欠くことも、悪戯にこと欠くこともなかった。それが、どうだ、このざまは。田んぼは消え、高い倉が所狭しと建っている。倉の壁には布団が干され、垂れ下がった幟(のぼり)のようだった。
 天邪鬼は、ごろりと横になり、慌てて飛び上がった。ざらざらとした硬い石の面は、おてんと様の熱を吸って、焼け石のように熱くなっていた。「あちちあちち、こんちくしょうめ」と叫びながら、天邪鬼は日陰に逃げた。
 低い音をたてて微かに振動する長持ちに寄りかかり、天邪鬼は空を見上げた。空はすっきりと晴れ渡り、山の向こうに白い雲が見えた。
 天邪鬼は一計を案じた。素早い身のこなしで倉を降りていくと、山に向かって全速力で駆けていった。

 晴れ渡っていた空は、一瞬のうちに黒雲に覆われた。切り裂くようにジグザグの光が落ち、どん! がらがらがら!、大気を震わす音が響く。叩きつけるような大粒の雨が降り出した。
 人々が濡れながら走っていく。倉の壁に干してあった布団を大慌てで取りこんでいる。誰もいないのか、びしょ濡れになっている布団もあった。
 天邪鬼は大喜びで、倉の天辺で踊り跳ねていた。ちょいと怒らせるように、二言三言、雷に囁いただけで、この凄まじさ。
 光が天から地へと走る。
 どん! がらがらがら!
 轟音が響く。
 天邪鬼は踊りながら叫ぶ。
 もっともっともっと! 怒れ怒れ怒れ!
 大気がくわと張る。眩い光が倉の天辺に突き刺さった。
 どん!


 翌朝、マンションの裏手にあるゴミ集積場の近くで、黒焦げの小さな塊が落ちていた。マンションの管理人は救急車を呼ぶか警察を呼ぶかと考えたが、結局、人間の子供にしては小さく痩せていて、何よりも尻尾のようなものが見えたので、山猿が落雷に当たって死んだのだろうと思うことにした。最近では、マンションが建ちすぎていて、築三年のこの建物ですら空室があった。不吉な噂がたてば、人々は他所へ引っ越していくだろう。不手際があっては、自分は失職してしまう。黒い塊を新聞紙にくるんでからゴミ袋に入れ、今日が可燃ゴミの収集日であったことに管理人は安堵した。塊の頭の辺りに小さな尖ったものがあったことは見なかったことにした。

 ―了―




〜「雷、救急車、マンション」「夏場の話」

急いで書いたので、いろいろと粗のある作品。
天邪鬼に尻尾ってあったけ?、と思ってみたり、
「可燃ゴミの収拾日」なんていう、おバカな誤変換もやっちまっている。

いや、それより何より、雷の描写は難しかった。
もっと上手く書けるようになりたいなあ。

今気づいたのだけれども、三文字タイトルが続いてますねー。

『やめて』

 マジ、やめてほしい。
 三年ぶりに会ったマサトは蓬髪なんて生易しいもんじゃない、もじゃもじゃ、とにかくもじゃもじゃに組んずほぐれず状態の髪を後ろで強引に皮紐で括っている(皮の元の持ち主のことは考えまい)。服装は、最初は青のチェックのコットンシャツ(私が餞別代わりにプレゼントしたから、ようく覚えている)にジーンズだったのに、今じゃ、原型を留めてないくらいにズタボロになっている。原始人だって、ちっとはマシだった筈だ。
 そして、我慢がならないのが、この匂い。最後にお風呂に入ったのは日本を出国する前の日だったんじゃないの、ってくらいにクサイ。鼻をつまむべきか、口で呼吸をするのを止めるべきか、究極の二者択一。どっちも選べればないっつーの。
「お、感動に打ち震えて言葉も出てこないみたいだな、よしよし」
 そう言って、マサトはガハハハと豪快に笑ったけど、こいつ、本当にわかっていない。この震えは、殴ってやりたくて握り締めた拳を理性で抑えているのだってことを。
「そうそう、忘れるところだった。感動の再会よりも、もっと感動的なものがあるんだ。ほれ、おまえに一番に見せたかったんだ、驚くなよー」
 マサトはシャツの中に手を入れると、首に吊るしていた紐をたぐり寄せた。紐の先には直径五センチくらいのリングが結ばれていた。
「これはな、古代のシャーマンが身につけていたリングで、神の力を自分の中に取りいれようとしたものなんだ。原始宗教だから、神の概念は具体的なものじゃなくて、自然の脅威や豊猟を司るものに対してなんだけどな。ここに文様が刻まれているだろ、この細工だけでも値千金、現代の貨幣価値では計りしれないものがあるんだ。ほれ、遠慮するなよ、顔を近づけてよく見てみろよ」
 鈍色のリングは間で三ミリくらい離れていた。U字型というよりは円に近い。表面に刻まれた文様の部分は黒ずんでいて、よく見れば、何かの絵のようにも、象形文字のようにも。
「ジャングルの奥地でこれを見つけた時は、ホント、感動したぜ。現地で雇ったガイドは途中でトンズラするし、食料は尽きるわ、熱は出るわで、このまま白骨化して、文字通り骨を埋めるんじゃないかと思ってたからな。このリングを身につけたら力が漲ってきてよ、どんなことをしても、オレはおまえの元へ帰るんだって思ったのよ」
 だから、「やめて」と言ったんじゃないの。こんなことを繰り返していたら、命が幾つあったって足りないのに。どれだけ私が心配していたのか、私のことを本当に好きなら、どうしてそばにいてくれないの。
 私は両手で顔を覆ってしまった。
「いや、だから、泣くなって。ちゃんとこうして無事に帰ってきたんだから。リング様様ってわけさ。ほら、こういう風に使うんだ。おまえもリングを身につけたら、きっと力が漲るぞ」
 顔を覆ったまま、指先を開いて、そっと見ると……。
「いやあああああーっ」
 叫びながら、右の拳を思いっきりマサトの顎に炸裂させてやった。

   ―了―

〜「原始人・宗教・貨幣」「現代の話」

久々にコミカルな作品。
地の分が、ちょっともたついている感じがするのが、なんとも。
リングは鼻環のつもりで書いていたんだけど、どうにもそのようには読解できないんじゃないかと思って補足を。補足じゃなくて、実際に鼻に付けている様子を書けばよかった。

『出会い』

 予備校の裏階段の踊り場で、遼は、見るとはなしに雑多な街並みを眺めていた。個人面談を終えたばかりで、父親に連絡をすると言った講師の言葉が気分を重くさせていた。講師は今日中に父に電話を入れ、そしてその後は、お決まりの諍い。二浪目に入っても相変わらず伸びない偏差値は、何を言っても聞き入れてもらうのは無理なことを物語っている。講師が最後に言った「現実を認識しろ」という言葉が尖った石となって胃の底を転がっていた。石はやがて胃を侵食し、躯の中を喰っていくのだろう。いっそ、全部喰われてしまった方が何も考えなくていいのかもしれない。
「ねえ、君、南中でショートを守っていたでしょ。柏小ではレフトで四番、違う?」
 いきなり声をかけられ、遼は振り返った。
 透明なブルーのクリップで留めた髪がほつれて肩にかかっている。薄っすらと化粧をし、涼しげなキャミソール型のワンピースは白い肌を浮き立たせていた。国立医大コース、前回の模試ではトップだった片桐真帆だ。ピアスと揃いのネックレスが陽に反射して煌いていた。
 驚きは困惑に変わる。
 挨拶も自己紹介もなし、しかも、私立の女子高出身で、自分よりは一学年下。その真帆がどうしてそんなことを知っているのか。
 大きな瞳が挑むようにねめつけている。遼は適当に誤魔化して逃げようかと思ったが、どうやらそんな選択肢はなさそうだった。
「ああ、やってたさ。なんで、あんたがそんなこと、知ってんの?」
 少しぶっきらぼうだった、とも思ったが、口に出た時は遅かった。真帆は眉間に皺を寄せ、視線をそらした。
 
 漆原遼。
 小学校の時は小柄だった。チームの中で一番背が低かった。でも、走るのが速くて、レフトだけでなくセンターにまで走っていって球を捕らえるものだから、こっちはできるだけライト方向に打つように監督に指示された。
 ちゃんと名前も覚えている。球をキャッチした時のガッツポーズも、満面の笑みも。埃と汗と夏草の匂いも、歓声も何もかも。
 覚えていたから、中体連の時期は、遼のいる南中の試合をこっそりと見に行ったのだ。
 フルネームで声をかければ良かったのだろうか、でも、それじゃあ、ストーカーじみている。真帆は瞬時に浮かんだ迷いやシーンを打ち消した。
「私、西岡小でセカンドを守っていたの。市長杯で君の打ったボールが口に当たって、試合が中断したでしょ、覚えてる?」
 真帆は息を詰めるようにして遼の表情を覗ったが、何の変化も表れなかった。しばらくしてから遼が口を開いた。
「……思い出したよ。歯列矯正だかしていて、それで唇が切れて、血が出て大泣きしてたよね。救急車を呼ぶとかなんとか、親達が大騒ぎしてたよな。で、何? あの時はちゃんと謝っただろ。試合中の事故でわざとじゃないんだし、今更、そんなことを蒸し返して何が言いたいのさ、もう一度謝れとでも?」
「いえ、そうじゃなくて、そうじゃないの、謝ってほしいなんて全然思っていなくて」
 真帆の掌はじっとりと汗ばんでいた。動悸が激しくなってきて、目の前にいる遼にまで聴こえているのじゃないか、と思った。そう思うと、余計に緊張してきて、何を言いたかったのか忘れてしまいそうだった。

 変な女。いきなり昔のことを話し出したかと思ったら、今度はだんまりかよ。
 遼は心の中で毒づくと、階段を降り始めた。
「どうして、野球を辞めちゃったの! 私、漆原君は高校に行っても野球をやるんだって、ずっと思っていたのよ!」
 踊り場から降ってきた真帆の声に、一瞬、遼の背中は強張ったが、立ち止まることなく、そのまま階段を降りていった。

   ―了―


〜「クリップ、予備校、浸食」「複数の視点を持たせる」


久々に三語を書きましたー。
三人称で書いたのだけれども、なんだかヘンな感じが(・_・;)

登場人物の漆原遼クンは、前回書いた『ほとり』の遼クンです。そして、実は『      』のリョウ君だったりもするのだ。
ゴメン〜。
全部の話を繋げてちゃんと完結させるから〜、そ、そのうちに〜(^^ゞ



訂正。
「ピアスとお揃いの」を「〜揃いの」に直しました。。。。

『ほとり』

 K湖に行きたい、と妻が言った。
 何を呑気なことを言っているんだ、私は思わず声を荒げてしまった。傍にいた遼に、お父さん、ここ、病室だよ、と小声でたしなめられた。妻は笑顔を見せ、大丈夫よ、一泊くらい、遼が小学生の頃は毎年、キャンプに行っていたじゃない、と言った。
 キャンプをしたいって言ってるんじゃないのよ、湖のほとりでバーベキューをして、ボートに乗って釣りをして、それだけでいいの。花火もしたいけれど昼間じゃ面白くないから、それはいいから。K湖の近くに素敵なコテージがあってね、昨日、オーナーに電話をかけたら、空いているって言っていた。そこだったら家にいるのと同じで、躯にそんなに負担がかからないし。手術が終わってもすぐには退院できないから、今の方が自由に動けると思うのよ。来年は、ほら、遼も高校生だし、高校生になったら、親なんかと出かけてくれなくなるでしょ。
 クリーム色のカーテンがゆるやかに波打ち、六月の風が入ってきた。ライラックの香りが満ち、一瞬、消毒薬や薬の匂いを消す。私は妻の言葉を黙って聞いていた。
 どうせ、ほとりにいるのなら、
 カーテンがはためき、乱暴な音をたてる。遼は立ち上がって窓を閉め、病室に元の匂いが戻った。 
 結局、医師に反対され、自宅に一泊することを許されただけだった。
 
 妻の手術は無事終わり、夏の盛りに退院したが、半年もたたないうちに再入院した。遼の高校受験とも重なり、どうやって日々を過ごしたのか、記憶には残っていない。残っているのは、あの時の言葉だけだ。
 風に遮られた言葉を私は繰り返す。

 ―了―



「ことり」「さとり」と来たので、「ほとり」でオワリ。
 短いなあ。
 前に書いたものの一エピソードです。

さとり

昨日、第三回チャレンジカップhttp://www1.ttcn.ne.jp/~NIGIHAYAMI/ が終了しました。
『転』をテーマとした作品が投稿され、感想が入った後に、読者投票が行われました。

私は『累卵』という作品を投稿したのですけれども、







(良く言えば)読者を選ぶ作品というか、
(好意的に見れば)作者の趣味に走った作品というか、
(悪く言えば)相変わらずわけのわからない、中途半端な作品だったせいか、
結果は、まあ、あのような感じでした。わははは。

でもですねー、今回は、作品を評価してくれての投票(作者の姿勢に対する評価ではなく)が多かったと思うので、それは嬉しかった。

三語で書いた『天使日記』『埴生の宿』もそうなんだけど、この『累卵』も、一人称で書くにあたって、今までの自分ではやらなかったこと(やっても失敗したこと)にトライしてみて、結構、満足のいく仕上がりだったと思っています。
勿論、技術的に未熟な点もあるのだけれど、ここを修正すればなんとかなるんじゃないかなあ、というのが見えたかなあ、と。

技術的な面で、『累卵』でやろうとしたことは、語り手が語りたくないこと(直視したくないこと)を語らずして、読者にわからせる、ということでした。わかってくれる読者もいたし、わからない読者も、字数を増やして書いていけばわかるんじゃないのかなあ、と思いました。

作品単体として見れば、累卵な感じは出せたので、満足ですねー。
『累卵』は好きな作品なので、ちゃんと書いてみたいです。

ことり

先週はネット上でいろいろありました。
吉野町をご訪問の方々にはおわかりだと思いますので、詳細は省略しますが、自分の現実認識の甘さと判断の悪さを痛感しました。
また、良心的な方々にご迷惑をおかけしたことを、とても反省しております。

正直に申せば、不満は残っているのですが(自分の主張が認めてもらえなかったことではなく、別なことで)、最終的に、主たる目的を「ラウンジと三語の平穏」と定めたのですから、やはり、ここは口を閉じましょう。

早い時期に友人に強く忠告され、騒動の間も別な友人にアドバイスを受け、ほぼ収束した時点で友人達から耳に痛いお言葉も頂きました(でも、心には痛くなかったから大丈夫)。

多くの方の支えがあっての現在の芳野があること、嬉しく思います。と、これじゃあ、まるで、選挙に立候補しているみたいだ(笑)。

『埴生の宿』

 先生、こんにちわ。
 お手紙をどうもありがとうございます。とてもうれしくて何回も何回も読みました。毎日何回も読んでいたら、びんせんの紙がぼろぼろになってきたので、今は一日に一回だけと決めています。お手紙は全部おぼえているので、読まなくてもいいのですが、先生の字を見ていたら、先生があたしの目の前にいるような気がしてくるので、それで、毎日読んでいます。

 先生はお元気ですか。あたしは元気です。あたしはここに来て少し太りました。
 今日は雨がふっているので、農園に行けません。農園に行くのは楽しいです。みんなで歌を歌いながら行きます。「おおまきばはみどり」や「メリーさんのひつじ」や「ドレミの歌」を歌います。「はにゅうのやど」を歌うと泣く人がいるので、それは歌いません。あたしは「はにゅうのやど」が好きです。先生がオルガンをひいてくれましたよね。
 農園に着いたら草とりをしたり、こやしをまいたりします。みんな、こやしはくさくてきたないからいやがりますが、あたしは平気です。カボチャやニンジンが大きくなっていくのは楽しみです。秋になったらイモといっしょに先生のところに送ります。楽しみにしていてください。びょういんにいるみゆきちゃんにも食べさせてあげてください。みゆきちゃんはお元気ですか。みゆきちゃんはおこっていませんか。みゆきちゃんはあたしのことを何か言ってますか。みゆきちゃんの顔はきれいになりましたか。

 先生は、あの時のことを正直に話しなさいと言いましたが、わからないのです。どうしてあんなことをしたのか、今でもわからないのです。夜、ふとんに入ってから考えるので、少し思い出したこともあります。でも、わからないです。

 あたしはみゆきちゃんが好きでした。男と女の好きという意味ではありません。おねえちゃんのようで好きでした。みゆきちゃんはナンバーワンのホステスでした。よう子ママよりお客さんが多かったと思います。よう子ママの売り上げは知らないのですが、たぶん、ずっともうけていたと思います。土よう日の夜はあっちこっちのテーブルから指名がかかって、みゆきちゃんは赤のチャイナドレスで、お店の中を動いていました。あたしも早くみゆきちゃんのようになりたいと思いました。
 みゆきちゃんはやさしかったです。他のお姉さんたちは、いなかから出てきたあたしをバカにしてました。あたしのなまりをまねしたり、あたしがテレビを見たこともない、と言ったら、どっと笑いました。でも、みゆきちゃんは、あたしをかばってくれました。ドレスをかしてくれたり、おけしょうのやり方を教えてくれました。マッチのすり方も、お客さんに水わりを出す時に、どうやって出すのかも教えてくれました。うどんをおごってもらったこともあります。
 後で、みゆきちゃんも小学校の時に、あたしと同じいなかに住んでいて、先生に習ったことを知りました。みゆきちゃんも「はにゅうのやど」を歌ったって言ってました。
 お姉さんたちにはナイショです。みゆきちゃんは生まれも育ちも東京だってウソをついているからです。あたしとみゆきちゃんだけのひみつです。あ、先生も知っているから三人だけのひみつです。

 あの夜は雪がふっていました。火よう日で、お客さんはだれも来ませんでした。よう子ママは店じまいをするから、と言って、十時には、お姉さんたちもバーテンのエイジさんも帰しました。でも、話があるからと言って、みゆきちゃんをお店に残しました。あたしもいったん帰ったのですが、とちゅうで、わすれ物をしたことを思い出して、お店にもどったんです。
 うら口からお店に入ろうとして、びっくりしました。よう子ママとみゆきちゃんが、つかみあいのケンカをしていました。ママの帯はほどけ、顔は鬼のようで、結ったかみはぐしゃぐしゃになっていました。ママがみゆきちゃんの顔をはたくと、みゆきちゃんもママの顔をはたきかえしました。ママは「この、どろぼうねこっ! 今までのおんをわすれたのかい!」とどなりました。みゆきちゃんは「エイジさんはわたしをあいしているの。わたしと大阪に行って新しい店を持とうって言ってくれたのよ。年増のやっている、こんなしけた店じゃなくて、ミナミに大きな店を出すのよ」とわめいてから大声で笑いました。
 バーテンをやっていたエイジさんは、ママのいろだったんです。先生、信じられますか? だって、ママは四十をすぎていたし(お客さんには三十四才って言っていたけれど、本当は四十五才だったんですよね。さいばんの時に知りました)、エイジさんは二十五才くらいなんですよ。
  
 あたしは知らなかったんです。みゆきちゃんが大阪に行くことも、エイジさんとのことも。みゆきちゃんはあたしに何も言ってくれなかったんです。

 ぼうっとしていたら、ママのさけび声が聞こえました。そっちを見ると、ママが包丁を両手でにぎっていました。あたしはあわててお店の中にとびこみました。ママを止めようとしたのですが、ママがあばれて、そのひょうしに着物のそでが、ストーブのやかんにひっかかったんです。ストーブはたおれ、やかんのお湯がじゅうじゅうと音を立て、白い煙となりました。そして、火はあっという間にイスやカーテンに、もえうつりました。
 みゆきちゃんが顔から血を出して、たおれていました。ママはいませんでした。さっさと逃げたんです。お店の中にはあたしとみゆきちゃんだけでした。
 みゆきちゃんは「いたい、いたい」って泣いてました。
「エイジさんを呼んできて」とも。

 あたしはエイジさんを呼ぶより、みゆきちゃんのそばにいたかったんです。だって、あたしとみゆきちゃんの二人っきりだったんですよ。それに、エイジさんがどこにいるかなんてわからなかったから、呼びに行きようがないですよね、先生。


 たくさん書いたからつかれました。
 また、今度、手紙を書きます。
 みゆきちゃんと先生に会いたいです。先生がオルガンをひいて、みゆきちゃんといっしょに「はにゅうのやど」を歌いたいです。


   −了−

〜「鬼、ママ、お手紙」
誤字脱字、誤記誤用がなければいいんだけど(笑)。
ちなみに、私は「こんにちは」派です。

祝・三周年!

えーと、本当は五月五日にブログタイトルを『吉野町燦丁目』と変更し、賑々しく三周年に突入するつもりでした。
ええ、昨年の再開の折にはそのように決意していたのですが、すっかり忘れてました(笑)。
先日、ぽけ〜っとブログを見ていたら、いつの間にか決意の子供の日を逃していたことに気づき、慌てて、この運びとなりました。

ええ、ええ、そうザマス、昨年の五月の予定では、燦然と輝く吉野町になっている筈だったのに、だったのに、だったのに。。。。
今の状態じゃ、酸丁目というか惨丁目というか散丁目なのですが、やはり、ここは初志貫徹、希望は大きく鼻息は荒く、『吉野町燦丁目』でいきますっ!



ブログタイトルを勝手に変更していいのかしら、と、気にはなるのですが、
ま、過疎っているブログだし、多分大丈夫だろう。

と、決意も新たに、今後も、よろしく〜。

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